日本認定機関協議会(Japan Accreditation Council: JAC)は、国際的に通用する適合性評価制度に資する「認定制度」のニーズの高まりに応えるべく、経済産業省の審議会の一つである、「日本工業標準調査会(当時、現在は、日本産業標準調査会)」の提言を受け、国内の主たる認定機関及び適合性評価制度に関連の深い関連省庁部局等によって、2006年に設立されました。
現在、適合性評価制度全体の信頼性向上のため、また、同制度を支える認定機関の貢献を高めるべく活動を行っています。
このたび、国内認定制度創設30周年という節目のこのタイミングにおいて、2023年9月15日に、JACのメンバー機関を構成する国内5つの認定機関による対談を行いました。彼らが語る「認定のこれまで、これから」とはー

参加機関の紹介各機関の沿革と参加者(敬称略)

01国際的に認められる認定として

JACメンバーである各認定機関が運営する認定サービスは、世界各国の認定サービスとの同等性を確保するために、認定機関間の国際的な相互承認(ILAC MRA/IAF MLA/APAC MRA)に署名し、国際的に各認定機関としての能力の同等性が認められています。各認定機関の国際相互承認の署名時期は異なりますが、メリットや効果についてどのようにお考えでしょうか。

JAB

国際相互承認は、グローバルトレードの発展において非常に機能しているのではないかと思います。欧州の先行決定型に対抗するためといった意味でも、国際相互承認の仕組みは我が国にとってプラスに働いています。また、国際相互承認を前提に話を進めることで貿易上の技術的障壁を防ぐこともでき、有効に働いている面があります。

ISMS-AC

工業製品の輸出において、輸出先の国から製品認証を求められるので相互承認が有効ですが、マネジメントシステム認証に関する認定の場合、現状では国際相互承認がないと海外取引において不利になるということはあまりないようです。ただし一方では、ISMS国内認証機関からの国際相互承認のニーズはあり、国内においても、国際的に認められた認定の価値が広がってきていると思います。

VLAC

VLACの認定対象であるEMC試験の場合、海外では法律上認定試験所のデータを必要としていますが、日本だけが必ずしも認定取得を必須としてはいない状況です。そのような中でも、国際相互承認の利点とメーカによる認定取得の優位性が理解され、国内EMC試験所は比較的高い割合でISO/IEC 17025認定を取得しています。試験所の品質を維持するためのツールとして認定を維持して頂いています。

JASaff

JASaffは、本年(2023年)、APAC国際相互承認を取得したばかりです。今後、日本の食品等の海外進出の際に、国際相互承認により信用が得られるという一面があります。国際相互承認を維持し、日本の食品等の信頼性をバックアップしていきたいです。

IAJapan

国際相互承認の取得にはOne-Stop-Testingというメリットがありますが、日本では法律に基づく登録制度が国際的な枠組みの外になる等の理由もあり、他国に比べて認定数が少ない現状にあります。国内に国際相互承認の認定事業者の必要性の理解が高まり、今後、増えていくような対応を進めることが、我々の目指すところではないかと思います。

02変わりゆく認定制度の運営

近年、コロナ禍等の影響により急速に進んだDX化に加え、海外では認定の信頼性確保の動きがさらに強化されるなど、認定制度の運営は変革の時期を迎えています。認定活動のDX化や国際動向の変化に日本はどのように対応していけばいいでしょうか。

ここ最近導入が進んだ遠隔(リモート)審査について、どのように考えますか。

JAB

審査をリモートに置き換えることは慎重に考えていかなければならない面があります。例えば審査員が現場で五感を研ぎ澄ませて審査することがどの程度リモートで対応できるのか、といったことを考慮すべきです。パンデミック下では、リモートで対応せざるを得ない状況がありましたが、審査数の増加や質の低下の有無は現在調査しているところです。デジタル化できるところは積極的に進めていく一方、リモートによるリスク等を慎重に検証していきたいと考えています。

IAJapan

IAJapanではコロナ禍においては、原則、審査を遠隔にて行っておりました。先般、アンケートを行い、その結果には、「遠隔審査である程度は、現地審査の置き換えが可能なのではないか」という意見もありましたが、これまでの経験からも、現地審査が適している部分は現地での対応が重要であると考えています。他方、事業者による複数日の現地での審査対応はスケジュール調整等相応の負担がかかっており、例えば1日を現地審査、他を遠隔審査にするなど、適切な形で遠隔審査を取り入れていければと思います。

VLAC

コロナ禍では、リモート審査にせざるを得ない状況がありましたが、現在、VLACでは基本的には、審査を現地にて行っています。試験所からは現地審査を希望しているところが多いですが、分野を絞った拡大審査では、遠隔審査の場合もあります。DX化については、プロセスをいかに短時間で行うかということが課題だと考えています。

認定の分野や段階によって、DX化への取組やすさに違いが出てくる場合もあるのでしょうか。

JAB

認定証のデジタル化については、校正や試験分野は部分的なデジタル化が進んでいるため、活用しやすいと思っています。

JASaff

JASaffの認定対象は農林水産物資のため、審査の訪問先は農家や水産養殖業者であり、なかなかIT環境がそろわないのが現状です。認証機関へのリモート審査の事例は少なく、基本的には現地に行っています。

セキュリティ確保も含め、DX化推進には課題もあるのではないでしょうか。

ISMS-AC

現在、ISOにおいて、マネジメントシステム審査におけるリモート審査手法のガイドライン策定が進められており、ISMS-ACからは富永典子参事がその検討の場に参加しています。審査のリモート化については、“認証機関に対する認定審査のリモート化”と“認証機関が行う認証審査のリモート化”の2つを分けて考える必要があります。情報セキュリティの観点からは、この両方について、認定機関をはじめ、認証機関、試験所等も情報セキュリティに関するマネジメントシステムを構築・運用することが重要であると考えています。
加えて、デジタルデータの真正性の確保(デジタルトラスト)は、デジタル庁の政策の中でも重要な分野となっています。認定機関や認証機関、試験所が試験データ等を提出するときには、このデータの真正性を確認できる仕組みであるeシールを活用することが主流になってくるのではないかと思います。ISMS-ACでは、認証機関に対して電子署名を付した認定登録証の交付を行っています。

マネジメントシステム認証については、IAFの取組として「CertSearch」と呼ばれる証明書の信頼性確保に向けた取組を行っています。現在、国内で関係するのはJABとISMS-ACですが、こちらについてはどのように考えますか。

ISMS-AC

JABさんと情報共有しつつ、国内の認証機関にとって負担が生じないようIAFのルールに則って進めていくことを意識しています。

JAB

信頼性向上は必ずしもマネジメントシステムのみにとどまるわけではないので、今後広げていくことも想定していきたいと思います。

IAJapan

CertSearchは認定・認証された機関の情報がつながって見える化されており、調達の際の偽物探索にもなり素晴らしい仕組みであると思います。一方で、製品認証機関が認証したものについては難しい面もあると考えます。

03新たな認定ニーズに応えるために

世の中のニーズと共に、認定に求められるものも変化してきています。今後どのような分野で求められていくのでしょうか。また、それに対して認定機関が取り組むべきことはあるのでしょうか。

IAJapan

認定は、SDGs等の新たな価値や新規技術に対する適合性評価が必要になったとき、規制よりも迅速、柔軟かつ信頼感ある仕組みの構築のために有効なツールです。認定機関はルールから作っていかなければならないというところが大変だと思いますが、どこまで事業者に対してサポートしていけるのかを考えていきたいです。認定を取得するための具体的な方法は教えられない一方で、適合性評価制度についての知識は伝えるべき、というところの調整が難しいかと思います。

JASaff

認定対象が拡大する一方、標準化が進む中では対象を審査できる専門家が限られていくという現状もあり、どのような方を要員として確保すれば良いのかということが課題だと考えています。

VLAC

認定機関は、スキームオーナーに対しスキームについての助言はして良いことになっているので、専門家になる可能性のある方に意見を伝え、実現してもらうことはできると思います。

JAB

JABでは農林水産物やサービス、デジタル分野の適合性評価を進めていくために、これらの分野で認定が必要であるという認識を広めていく必要があります。欧州では政策が進んでいるので、動向をチェックしながら日本として意見を示すことが大切だと思います。

04日本の認定制度の未来のために

認定機関の国際的相互承認組織であり、かつ、適合性評価機関等利害関係者も参加するILACとIAFが近年中に統合され単一の国際組織となります。この統合を契機としてJACとして何か取り組むべきことはあるでしょうか。例えば、国際組織からの意見照会があった場合、日本からの発言や意思表明もJACからの意見として発出した方がいいという考え方もできると思います。

JAB

国内の利害関係は同じなので、JACが一体となり意見を出すということはいいと思います。

IAJapan

今後も様々な課題が出てくると思いますので、JACの活動としても開催頻度を上げていきたいとは思います。各関係省庁部局の方にも議論に参加いただき進めていければと考えています。

最後に、各機関から今後JACとして取り組みたいことを教えてください。

ISMS-AC

JACとしてできることに、国内の認定機関の必要性を社会に発信していくことがあります。工業製品・農林水産品の輸出の際に認定の必要性が生じることを関係者は理解していますが、一般的に国内の認定機関の重要性は理解されていません。国内に認定機関があり、国際的な認定機関フォーラムから評価を受け相互承認しているという仕組みをしっかりとアピールしていく必要があります。

JASaff

JASの認定制度など認定を認識していただくために活動していますが、農林水産物の標準化への理解が進んでいません。認定のメリットを発信するような活動をJACからも行っていきたいと考えています。

VLAC

2020年からJACの広報活動の一環としてのセミナーをオンライン配信するようになり、一般の方にも聞いていただけるようになりました。今後は、認定事業者・試験事業者の皆様に認定の活用事例についてお話をいただくということも考えていきたいです。費用対効果ではなく、認定を取得することによりどのようにビジネスを伸ばしていくのかという視点で、認定の役割を発信することが大事です。

JAB

JACメンバーの活動はそれぞれが独自性を持ち多岐にわたるため、分野ごとにテーマを決めて、普及政策セミナーをしていくのも1つの方法なのではないかと考えています。

IAJapan

認定する分野ごとの特色がある中で、DX化等分野横断的に扱えるものはJACの中で議論することで、効率的に進めることができるのではないでしょうか。また、これまでのJACの活動は、広報関係がメインでしたが、認定機関の在り方等の議論まで戻ってどのように連携できるかという意見交換ができたらと思います。さらにエンドユーザーのみでなく、企業の経営層に対して認定の重要性の話がダイレクトにできておらず、認知されていないのではと思っています。JACの場で皆様と協力して、認定を知り、活用してもらえるようにアピールする方法を模索できればと考えます。

国内認定制度の未来に向けて、各認定機関での活動に加え、JACとして取り組めることはまだまだあります。
今回の対談は、各機関での意識合わせの良い機会となりました。
今後のJACの活動にご期待ください。

参考:認定に関連する国際動向とJACの活動年表

国際動向 JACの活動
1996 【製品認証】ISO/IEC Guide 65発行
1998 【検査】ISO/IEC 17020:1998発行
2003 【臨床検査】ISO 15189:2003発行
2004 【認定機関】ISO/IEC 17011:2004発行
2005 【試験所】ISO/IEC 17025:2005発行
2006 【製品認証】IAF GD5発行 JAC設立。当初はJACのWG活動の1つJLAC(試験所認定機関連絡会)が活動の中心。
2010 JAC、JLACホストによる日本での国際会議(APLAC総会)開催
2011 【マネジメントシステム認証】ISO/IEC 17021:2011発行
2012 【検査】ISO/IEC 17020:2012発行
【製品認証】ISO/IEC 17065:2012発行
ISO/IEC 17065:2012への国内対応(製品認証WG開催)
2015 【マネジメントシステム認証】ISO/IEC 17021-1:2015発行
2017 【試験所】ISO/IEC 17025:2017発行
【認定機関】ISO/IEC 17011:2017発行
2018 JAC、JLACホストによる日本での国際会議
(APLAC/PAC合同総会)開催
2019 PAC及びAPLACが統合、APACに改組 国際投票方針のとりまとめ、セミナー開催等の広報活動等を実施。
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